野田村山ぶどう生産組合長 山ぶどう栽培農家・佐藤農園の佐藤嘉美さん

3月になったばかりのすこし肌寒い中、お忙しいお仕事の合間に野田村山ぶどう生産組合長で、山ぶどう栽培農家・佐藤農園の佐藤嘉美さんにお話を聞かせて頂きました。 

山ぶどう生産の流れを教えていただいていいでしょうか
佐藤「冬は12月から3月頃まで剪定をします。 12月中に済ましたいです」
それから春になって、5月頃新芽が芽吹き出します。

5月頃芽が出て、6月頃花が咲きます。
山ぶどうには雄と雌があって、花粉で受粉して成るんですけど平成13年当時、そのころ事業がはじまって植え付けをしたんですけど、山ぶどうは山にもあったんで受粉とかしなくてもいいだろうと思っていました。
本当にオスが少ない状態ではじめたんです。 ところが、はじめはまるでならなくて、今ではオスが非常に大事なのがわかって、オスの花粉が他の植物と違ってせいぜい10メートルぐらいしか飛ばないので、なのでオスの数に比例して収量が比例するのがこのごろわかってきました。 ただ山ぶどうは花が咲くまで雄なのか雌なのかまったくわからないんです。 区別がつかない。 花が咲いてもよく見ないとわからないのです。

だいたいそうすると6月頃になると梅雨になるんですよね。6月中旬ごろちょうどそのころ咲くんです。 そのころの気候がなりに着花に影響してきます。
花が咲いて1週間もするとね、すぐに赤い小さな米粒のような実がでます。受粉したのがわかります。 それでその時の景色もとてもいいです。
それからだいたい実が青い粒で、ある程度の成長、実になるのが、7月中旬ですか、葡萄の房の形になります。

消毒は年6街程度やっている。 山ぶどうだから山にあるものだから消毒なんて必要ないものだとおもって、最初の頃はまったく防除しなかったんです。 そしたらひどいことになりまして、いくら山にあるもので自然にあるものだとしても、これを畑にもってくると虫が発生したり、病気になったりと非常に苦労しました。

この地域特有のヤマセの影響は山ぶどうに影響があるのでしょうか?
この辺の山ぶどうはすごく糖度が高いんですよ。10月の終わりに26度ぐらいになったのは確認しています。 普通の生食の葡萄は18度ぐらいでしょう。 それと比べるとすごい糖度が高いです。
しかも他の地域より糖度が高いんです。 だから他の地域が欲しがるんですよね。 でもなんでだろうなんでだろうと。
結論から行くとヤマセの厳しい環境、寒暖のさが糖度を上げているんだろうと思っています。 ヤマセのおかげで糖度があがっていると思います。
他の地域と比べてそれぐらいしか違いがないので、そうだろうと思っています。 糖度が高くなるのはとてもいいことだと思います。

そして夏場の管理が非常に大事で風通しが良く、日当たりをよく、無駄な枝とか、巻きひげなんかをきちんと取ることが山ぶどうの良し悪しだったり秋の収穫のやりやすさに繋がります。
夏の管理が非常に大事になります。
山は自然でしょう、本当にいい環境になったやつはなかなか見たことないと思いますが、素晴らしい房がでることがあります。私は1回だけ素晴らしい房をつけた山ぶどうを見たことがあるんです。
木の一面に垂れ下がっている山ぶどうを。ものすごい房も大きくて、粒も大きくて、一房、一房が立派でお店に出したいなあというようなものを見たことがあります。
でも畑でやるには山ぶどうの環境を風通しがよく、日当たりをよく整えてあげるといい葡萄になります。

収穫は9月の末から早いのが始まりますね。早生と中生と晩成とあって、作業が集中しないようにするには収穫が早い品種が必要です。
早い品種に野村という極早生という品種があって、糖度が高くて房がびっしりとしていてごっつい葡萄があるんですが、これが主にロゼに使われたりします。その他品種的には野村の極早生の品種の他には、平屋系とか山下系とか、葛巻系がだいたいこの辺の品種で、あとは大野は大野晩生というのがあります。
この度新品種の調査が終わりまして、岩手県工業技術センターが作った地域の関係者によるワインの評価会がありました。「高森早生系」という早生のものと、私が見つけた平屋系の「佐藤」という品種がありまして加工適性があるとの評価が得られました。  特性としては、高森早生系は9月の中頃から糖度が18度とか早生の品種です。作業の分散化によい品種です。 ワインの香りもも非常に良い評価でした。 私が見つけた佐藤については、すごく耐病性に優れていることと、収量性が高いということですかね。
「佐藤系」はどうやって見つけたのでしょうか?
最初山ぶどうを始めた頃、山ぶどうは山のものだから消毒しなくてもいいだろうと思っていて消毒しなかった時期がありました。やるとしても手で消毒する感じだったんだけど、とてもできなくて、そのときに「べと病」という怖い病気があってね。 葡萄の全部、葉が腐って落ちてしまうんですよ。 べと病が出た時に、何本かある中の木が部全滅しているのにも関わらず、秋まで立派に葡萄をつけている木がたった1本あったんです。これはと思って注目しましてね。これだけ「べと病」で全滅しているのに立派な葡萄を付けているし腐ってもいないし葉っぱもピンとしているのがありました。 そこからそれを挿し木とかで増やすようにしていきましたね。 そして成長が悪かったり、しおれたり腐ったりしたものは淘汰していって、佐藤になりました。
当初80アールあって、最初の年のあたりは100kgぐらいしかとれなかった。 箱をいっぱい用意してね。 でも採ってみたたら5箱ぐらいしかとれなかった。 今だと10aあたりにすると250kgぐらいかな。 その目安の半分くらいが長く続きました。それからオスを増やしたりとだんだん改植が進んで、ある程度木が成木になった時点で、700kgぐらいまで取れるようになってきた。3年連続1トンとるようになったんです。去年はちょっと天候がわるくて長雨になって下がりましたけど、そのぐらいの技術と畑の能力が上がってきたということですかね。 山のものだと大豊作の次の年には隔年結果といって、一粒も実をつけないでしょう。 畑に植えてもその傾向があるんだけど、それをさせないように取る技術がなかなか難しいところです。 それなりの管理が必要になってきます。

収穫は9月ごろから始まります。うちは収穫期に他の畑の比べてあまり人を必要としません。人件費を安く抑えられています。 それはいい葡萄といい環境を作っているからだと思います。 それは夏場の手入れをきちんとしているからです。 とりやすく、房が大きい、しおれたりする草が少なくなり選果作業がすごく楽なためです。 一番厄介なのは「巻きひげ」です。 山ぶどうついているじゃないですか、あれをきちんととらないと、からませると芯が伸びる習性があるから、からませないとほとんど伸びない。 「巻きひげ」をとる管理を大事にしています。

収穫が終われば、10月いっぱいぐらいで収穫が終わります。12月頃から剪定作業に入る人はいます。一回寒さに当たってしまえば良いですから。そういう流れです。


消費者の皆さんにお願いします
ワインは今関税が下がって外国からすごく安いワインが入ってきていますね。 でも野田村のワインは値段が高いんですよ。結構。 なんせ手間がかかるんでどうしても高くなる。 だけど日本固有の山ぶどうで作られた100%本物のワインだということを伝えたいです。 こだわりがある人に是非味わっていただきたいです。
これまでは復興支援という形でサポート会員になってもらって応援して貰っていましたが、10年もたつと震災の復興支援じゃないだろうし、本当に真価が問われると思っています。 その中で私がこだわるのは糖度が高いということです。

山ぶどうのワインは作ってすぐは酸味が強いです。2,3年寝せてから飲んでもらうのが一番だと思います。 今コロナで流通が悪くなっています。 苦しいですが、今がチャンスじゃないかとおもっています。 今ある程度の熟成をさせて酸味がまろやかな状態で皆さんに飲んでもらえることで、より山ぶどうのおいしさがわかるワインを味わっていただきたいと思っています。 これまでは新しくワイナリーを開いたということもあり、ワインが売れてお盆の頃には在庫がなくなるという状態でした。 これからも製品の中身で勝負していきたいと思っています。

収穫期に撮影した佐藤農園の様子





これからの夢、こうしていきたいことなどありましたら教えて下さい。
山ぶどうという響きがすごく好きで、本当に自然のものという響きなんじゃないかと自分で思っています。
この日本の古来からある自然のもの、山ぶどうからできたというものを売りにしていきたい。
外国に無いものなので。外国にも進出できるような製品を作りたいです。 坂下さんに頑張ってもらいたいです。
本日はお忙しい中ありがとうございました。
まだ3月の寒い中農園をお邪魔いたしました。次は5月頃の芽吹いている時に訪問したいと思います。
次回お楽しみください。

野田村の山葡萄生産者